敦亀通信

九頭竜湖の絶景に五平餅

更新日:2020/10/12

10月11日の日曜日、家族と一緒に大野方面にドライブした。R157を岐阜方面に走り和泉村を越えると右手には九頭竜湖が広がる。この湖は人造湖であり中央部に建造されている九頭竜ダムは福井県、嶺北地方の貴重な水がめで豊富な水量を利用し発電所も建てられている。夏から秋の台風や集中豪雨があっても、ダムのおかげで下流の大野、勝山など嶺北地区では災害の発生が少なく恩恵は計り知れない。道の駅九頭竜で五平餅を買った。焼きたてで香ばしい香りが車内に拡がる。熱いうちに頂こうと、駐車スペースを探しながら走ると、ちょうど良いスペースが見つかった。そこで車を止めて、ゆっくり五平餅を頂いた。五平餅を食べながら、ふと山側に目をやると湖底に沈んだ長野部落の「ふるさとの碑 長野部落」という記念碑が見えた。判読不明の個所もあるが、なんとか読むことができるのでここにご紹介してみよう。

「昭和39年4月、公益企業及び電源開発の目的を以て当部落に九頭竜ダムの堰堤並びに、発電所が構築せられ部落民は緊急立ち退き移住を余儀なくされるに至ったのである。幾百年の間住み慣れた先祖伝来の懐かしい「ふるさと」を後に新天地として大部分は岐阜県および愛知県に一部県内に夫々移住したのである,,、、省略、、、、茲に遠い先祖の昔を偲び且つ亦、永い将来の為、水没記念の碑を建立し〇〇記念とする」昭和45年8月 〇〇,,、、、〇〇」(○○部分は判読不明箇所)

碑文の文字を通して、お国のためとはいえ地区の人たちの寂しくやるせない気持ちが伝わってきた。時の大臣にしろ、首長にしろ為政者たちは「公益の重要性」を唱えつつ開発行為を進めるが、いつの世も苦しむのは住民であっただろう。先祖伝来、何百年もの間住み慣れた故郷を去らなければならなかった人たちの苦しみは実際に経験した者でなければ分からないだろう。遊びなれたあの神社、小川、住み慣れた家々など、現在でも福島原発事故のために故郷を去らなければならない多くの人たちが苦しんでいることにも思いを馳せた。そのような苦しみは知られることがないまま一切の出来事が湖底に消え去っていくのであろうか。九頭竜川ダム建設を巡っては、国会で汚職の疑いありとされ大きく紛糾したという事実は消すことができないだろう。この事件は「人間の条件」を書いたベストセラー小説家 石川達三が「金環食」というタイトルで事件を取り上げるほど重大な事件であった。しかし今では、その時の関係者である政治家たちお役人たちも民間人たちもほとんど生存していないだろう。

紅葉にはまだ早いが周囲の山々は色づきはじめている。湖岸を渡る風もさわやかで素晴らしい景観と五平餅の美味しさが悲しい気持ちをきれいに美味しく癒してくれたのである。