敦亀通信

春の女王

更新日:2020/05/12

春になると山菜の便りに心が騒ぐ。色々な山菜を心に浮かべ、あちらこちらの山に思いをはせている。日当たりの良い斜面に生えるタラの芽は山菜の王者と呼ばれる。とげのある白っぽい木が目立ちすぎているのだろうか、春に新芽が出るとすぐに登山者や山菜採りの人たちに先端をポキリと折られてしまう。毎年これを繰り返されるので丈もあまり育たずかわいそうでならない。そういう自分も見つけると容赦なく先端をポキリとやるので思いと現実の行動が矛盾している。タラの芽の天婦羅は口に入れた瞬間、香りが口いっぱいに広がりシャキシャキした歯応えがある。一緒に頂くビールは最高に美味しく高級料亭の高価な天婦羅もかなわないだろう。

こんなに美味しい山菜であるが数が少ないという問題がある。これを解決してくれるのがコシアブラであろう。タラの芽は1本の木に2~3本の新芽しかとれないがコシアブラはあちこちの山に自生し1本の木で無数といっても良いほど多くの新芽がとれる。おまけにタラの芽のようなとげも無い。又、たくさん生えている新芽を頂戴しても樹木の勢いは衰えず「なんともございません、私はまだまだ元気ですよ」といった感じで初夏を迎える頃には隆々と元気な姿に戻るのである。紅葉の時期には周囲の広葉樹と一緒になって素晴らしい秋景色を見せてくれる。タラの芽が山菜の王者ならコシアブラは王者を補佐する山菜の女王と呼びたい。コシアブラのような人が増えてくると我々の社会も良くなるのかもしれない。