敦亀通信

旅・女性・宿

更新日:2020/08/26

「Go to 」キャンペーンを利用して全国各地へ旅した人も多かったことでしょう。自粛、自粛で心も疲れきり、たまには心を癒してくれるところへ旅することも自然なことでしょう。しかし旅に行けばお金もかかります。だから「Go to」キャンペーンで補助金を受け取り旅に行くのですが、我々庶民には高値の花であります。多くの人は蜜を避けながら心と体を休ませるため色々な工夫をしています。カラオケで好きな歌を歌うと気分は晴れますが、密という点ではコロナ感染が心配です。そういったときは一人しずかに家でCDに耳を傾けるのもいいことでしょう。先日、懐かしい歌謡曲を聴きながら感じたことをひとつ。都はるみが歌う「北の宿から」は一人の女性がどこか北の宿に居ながら、遠く離れた愛しい人を思う、という設定です。歌詞を聞きながら、「ここで思われている男性はなんて幸せな男なんだろう」、と感ずるのは私一人ではないでしょう。「、、、着てはもらえぬセーターを寂しく編んでいます」、、というところは、この人に対する同情心さえわきあがってきます。「なんでこんないい人をほっとくんだ」などと、半ば嫉妬心の混じったぼやきをいれながら、世の中にはこのような幸せ?な男性が沢山いるんだろうな、そういえばハンサムなAかな、いやBも相当もてていたぞ、、、と思ってしまいます。しかし歌詞を追ってゆくと他の部分では「あなた、死んでもいいですか、、、」などと、ちょっと危険な気持ちを抑えきれないようなキツイ言葉も出てきます。誰にでもいえることですが、この人は、静かな中に心の奥底では激しい心を持った人かもしれません。自分の恋人が、このような人であったとき、それを喜ぶべきか、それとも、ちょっと一歩下がってしまうかは男性側の好み次第でありましょう。話は変わって、もう一曲、よく似た歌がありました。時代がグーンと遡ってしまいますが高峰三枝子が歌う「湖畔の宿」です。この歌は昭和15年に発表され大ヒットし、高峰三枝子が戦地に赴いた兵士を慰問した際、一番リクエストが多かった歌といわれています。この歌も若い女性が胸の痛みに耐えかねて、幸せだったころの思い出に繋がる古い手紙を燃やすシーンが1番の歌詞です。胸の痛みは当時、流行っていた結核ではなく心の痛みであるのは明白でしょう。ひょっとしてその心の痛みは戦地に赴いた恋人かもしれません。また、恋愛感情ではなく人生の苦しい体験に遭遇したことから、それを忘れるための旅行かもしれません。「山の寂しい湖」の情景に浸れるところが近くにあります。敦賀から30分も車を走らせると余呉湖があります。シーズンオフであれば観光客もまばらで湖の周り約6kmあまりでしょうか。春には黄色のサワオグルマ、初夏には色とりどりのアジサイが咲き乱れ散歩には絶好の場所です。宿泊施設もありますから文字通り湖畔の宿を楽しめますので機会があればどうぞ。「湖畔の宿」の行間から伝わってくるのは「北の宿から」に感じられる「激情」ではなく、しみじみとした寂しさであったり、かなえられそうにない淡い夢に対する思いです。「戦後強くなったのは女性と靴下」という言葉を知っている世代も少なくなりましたが「北の宿から」と「湖畔の宿」どちらも「女性と宿、そして物思い」が共通しています。しかし人の思いは時代が移るにつれてこんなに変わってしまうのでしょうか。今なら、SNSで手軽にツイッターやラインで自分の思いを伝えられることでしょう。

 

夕日に沈む余呉湖