敦亀通信

己高閣の十一面観音様

更新日:2025/03/17

2025年3月16日(日)NHKテレビ、午前8時からの「小さな旅」を見る。今回は滋賀県長浜市である。私にとって長浜は月に何度も訪れる街であるのでじっと画面に引き付けられた。長浜市は琵琶湖のほとりである。この番組では長浜市に住む人たちの日頃の生活シーンを取材しながら地域や住民、自然、風物を放映するものである。その中の1シーンとして琵琶湖産の稚鮎の話題が出てきた。稚鮎をとる漁師さん、それを仕入して消費者に売る魚屋さん、そして稚鮎を求めるお客さんである。稚鮎を買ったお客さんが稚鮎をゆでる芯が出てきた時、「そうだ、自分も去年稚鮎を買ってきて佃煮を作ったな」と忘れていたシーンを思い出した。妻も同様な思いであったと見えて既に冷蔵庫を物色している。冷凍庫に保管してあったようだ。早速、レンジで解凍し2匹を小皿に入れて出してくれた。テレビで放映していた稚鮎は5~7cm位とに見えたが、私が頂くものは10cm位で稚鮎よりは大振りである。早速食べてみた。美味しい、、、、なんで去年は食べなかったのだろうか、と思った。妻に聞いたところ、「昨年、タートルクラブのお客様に出すため作ったはずよ」と言われた。そういえば大きな鍋に沢山の稚鮎を入れて佃煮を作ったことを思い出した。レシピ稚鮎が陳列されている場所に置いてあったので、それを見ながら数時間かけて作ったのである。すると今日食べたのは、そのお裾分け分であり2匹頂くともうないのであった。その後、番組は竹生島で営業する食堂もあったが私の心は長浜に向かっていた。妻に対し、「滋賀へ行こう」と宣言した。妻も私と同じ気持ちになったのであろう。反対はしない。今日は日曜日である。晴れてはいないが、雨も午後まで降らないようだ。嫁いでいる娘にも連絡し滋賀までの運転を依頼した。まったく自分勝手の思いで申し訳ない依頼ではあったが娘も私のわがままを聞いてくれた。とりあえず北陸高速道を長浜に向かう。「お父さん、長浜のどこへ行くの?」という娘からの問いに、私の心に「とりあえず、木ノ本で降りよう」「木ノ本からどこへ?」と聞かれると、私の心に「己高閣(ここうかく)に展示してある十一面観音」が浮かんだ。数年前に、己高閣を訪れ拝観料を支払見学したことがある。そのときも妻と娘、そして私であった。久しぶりに観音様を見学したい、という思いにより「己高閣の観音様」と遠慮がちにハンドルを持つ娘に言った。娘は「またまたお父さんのムラ気が始まった、文句を言ってもしょうがない」と思ったのだろうか、己高閣の方面を目指してくれた。己高閣の駐車場に着いた。広い駐車場は誰も止まっていない、私たちだけであった。娘と妻は「ここで待っているからお父さんだけで見学してきてちょうだい」という。仕方ない、私の気まぐれ?にお付き合いするのは大変であろう。早速、管理事務所に行って入場券を買い求めた。管理事務所には3人程の男性が詰めていた。拝観料500円を支払うと、年老いた係りの方がご案内してくれた。建物は「己高閣」、「世代閣(よしろかく)」の2棟である。己高閣は奈良~平安初期に背後の己高山(こだかみやま)に建てられ、現在は礎石や石垣しか残っていない鶏足寺から移された仏像が数多く展示されている。中でも、見ものは十一面観音像であった。あの行基様が鶏足寺を創建した時、彫られた観音様である。しかし数十年の時を経て鶏足寺も衰え廃寺同様になっていたのを天台宗の開祖,最澄大師が再興したといわれる。その時に十一面観音は首だけがのこっていたと言われ、首から下の胴体を新たに彫ってつないであると言われている。それが今、私が見ている十一面観音像である。観音様のお顔は端正な大人の顔であった。私はありがたく拝顔し手を合わせた。傍らには案内してくれている係員がいるので、あんまり時間もかけていられない。他の仏像見学もあるので、いつかまた、次の機会に拝顔できるようこころの中でお祈りさせて頂いた。おかげさまで充実のひと時であった。