敦亀通信
忖度と作戦要務令
更新日:2018/03/23
旧陸軍が制定した「作戦要務令」は軍隊に活動での精神的な支柱や組織、心得などを分かりやすく表現した名文とされている。大東亜共栄圏に覇権をとなえた日本陸軍の将帥から兵卒にいたるまで、この要務令を忠実に守って軍務に就いていたのである。ところで、この要務令の中に次のような一文があることをご存知だろうか。
、、、、、、、、「独断はその精神においては決して服従と相反するものにあらず。常に上官の意図を明察し、大局を判断して、状況の変化に応じ、自らその目的を達し得べき最良の方法を選び、以って機宣を制せざるべからず。」、、、、、、、、
戦闘行為中や状況の厳しい中においては、上官の判断を待って行動することが出来ないことが度々生じてくる。こんなとき敢えて「自分は上官に命令なしでは行動せず」と決め込んで、とるべき策を実行しない場合、戦敗に繋がることは多くある。だからこそ要務令では現場で戦闘中の兵士や中間の管理職であった尉官、佐官での独断行動を認めているのであろう。しかし次のような条件があった。上官の意図を明察すること、大局を判断すること、状況の変化に応ずること、目的達成のための最良の方法を選択、ということが必要条件であり、これが欠けていると、後で厳しい軍事裁判が待っていることになる。これらの条件は初心者にとっては全て正しく理解することは困難であり、そのために軍人は若い時から学問と実践に励んできたのである。この中で、「上官の意図を明察し」とあるが、国会で騒がれている忖度(そんたく)という言葉もこの意味を表現しているようだ。国会で答弁した官僚は上司の意図を明察し大局を判断したのである。状況の変化に応じ文書も書換え現実との矛盾にもそつなく対応したのであろうか。要務令の本旨とは全くことなる行動であった。
翻って、私達の社会や職場でもこうしたことはよくある。任務遂行能力という基準で人を評価する時、上からの指示や命令が無くては行動できない人だ、などと悪い評価を受ける人、これに対し上から命ぜられなくても常に積極的な行動をして良い評価を受ける人など様々である。作戦要務令のように行動すればよいのであるが、忖度という言葉が余りにも悪いイメージとなってしまった感がある。しかし、忖度という言葉は本来素晴らしい言葉である。重要なことは作戦要務令の文章の後半部分、、、、自らその目的を達し得べき、、、その目的という言葉である。その目的が万民の幸せのために正しいものであれば忖度という言葉に真実味が宿ったのかもしれない。