敦亀通信
サル団子
更新日:2020/06/08
道元禅師が宋の国で修行中の話を弟子の懐奘が正法眼蔵随聞記で紹介しています。
以下、正法眼蔵随聞記より
禅院にして古人(こじん)の語録を見し時、ある西川(せいせん)の僧の、道者(どうしゃ)にて有りしが、我れに問ふて云(いわ)く、「何(なに)の用(よう)ぞ」。 答えて云く、「古人の行履(あんり)を知らん」。 僧云く、「何の用ぞ」。 云く、「郷里に帰りて人を化(け)せん」。 僧云く、「何の用ぞ」。 云く、「利生(りしょう)の為(ため)なり」。 僧云く、「畢竟(ひっきょう)じて何の用ぞ」。」これには道元も困ったのではないかと思われます。そうした出来事を通じて、さらなる修行を極めて行かれたのでしょう。
翻って、現代社会では「タテマエとホンネ」が氾濫しています。新型コロナをめぐって「コロナの蔓延を防止し人の命を大事にしなければならない」というタテマエはまさに真理であり、こうしたことから不要不急の外出を避ける、3密を避ける、マスク着用etc、様々な行動指針が示されています。「ソーシャルディスタンス」という言葉は「密」を避けるため社会のあちらこちらで使われ、小学生でも十分その意味を理解して行動しています。日曜日の朝、NHKテレビ番組「さわやか自然100景」は小豆島の春から初夏の自然についての放映でした。その中で、寒霞渓に群生する日本猿の群れを紹介しています。敏捷に岩から岩へと跳び歩きエサを求める猿たちの姿はほほえましく見ているものを飽きさせません。とちゅう、サルたちのあるシーンが忘れられませんでした。それは、寒風吹き荒れる厳冬期には何匹ものサルたちが風邪の中でお互いの体と体を密着させ寒さと戦っている風景でした。こういった行動は昔からサル団子と呼ばれ遠くは青森軒下北半島のサルをはじめ日本列島のサルたちの冬の風物詩になっているといわれます。
現代の日本では冬の厳しい北風は建物や暖房装置が守ってくれます。しかし我々に吹くものは北風だけでなくコロナの恐怖があり、生活や仕事の苦しみ、空虚感です。こうした場合、日本人のは、家族、職場、友人、関係者はコロナの蔓延防止のため一定の距離をおきながらも団結し、我慢しあってコロナの終息を願っています。しかし一部の方たちは夜の街や歓楽街での娯楽や遊興がサルたちのサル団子であると信じているのでしょう。ソーシャルディスタンスを維持しなければならない期間は永久ではありません。やがてはワクチンが開発されコロナの勢いも衰える時が来るでしょう。ソーシャルディスタンスで離れていても、未知の隣人であってもお互いに強い信頼のきずなで結ばれていることを信じてゆきましょう。