敦亀通信
ラブユー東京
更新日:2021/09/07
七色の虹が消えてしまったの、、、で始まるラブユー東京は1966年発表と共に当時のベストセラーとなった。
軽快で少し哀調を帯びたメロディで今でもカラオケの人気曲である。夜勤のひと時、工場の外へ出て夜空を眺めながらこの歌を口ずさんだ覚えがある。最近になって、この歌の歌詞を見ると、当時とは違う意味合いがあるように感じた。当時と今との違いはなんだ、と聞かれると、当時は自分の行く末に限りない夢と希望を持ちそれが努力と忍耐で実現できる、というように考えていたのではないだろうか。その後、幾星霜を重ねた私にとって若き日の希望に満ちた明日は見えない。いや、見ようとしていないというのが本当のところである。そうした心を救うものがある。それは宗教心というものであろう。「般若心経」中に「色即是空」「空即是色」.という言葉がある。浅学菲才を顧みず、こうしたテーマを語ることは真に恐れ多いことであるが、お許しいただきたい。「目に見えるすべてのものは空であり、なんにもないのだよ。その何にもないところにまことがあるのだよ」昔からこのような意味を聴いて、分かったような分からないような気持でいた。今、ラブユー東京の歌詞を見ていて気が付いたことがある。
1番の歌詞は若い女性が愛した人と一緒になれない苦しみを歌っているように思われる。現実の娑婆ではどこにでも、誰にでもあることである。日々こうした苦しみに悩み悶えているのが我々の姿であろうか。しかしこれはなにも恋人同志の恋愛関係だけとは言えないのではないだろうか。心の底から愛しても、思い通りにならないことはどこにでもある。親子や家族の関係のように肉親に対する愛もあるだろう。もっと考えれば、仕事、趣味、なりたい自分、あってほしいもの例えばお金、名声、健康など数えきれないほどの欲望が我々の周囲に渦巻いている。しかし、そうしたものは得れば得ただけ次なる欲望が生まれ死を迎えるまで無限に続くのが人生であり行く手には喜び、希望、願望が溢れ落胆、絶望、執着の心が渦巻いている。1番の歌詞に戻ろう。“あなただけが生き甲斐なの 忘れられない、、、”はまさに私の悩んでいる姿である。こうしたどうしょうもない心境から歌詞は2番に移る。このような深く悲しい苦しみを経た後に問題の本質を捉え本当の智慧が生まれてくる人もいる。また、途中で挫折したり妥協したり自分自身をさらに苦しめ地獄の底から抜け出せない人もいる。
2番の歌詞は、執着心から逃れ真の知恵に目覚めることが出来た人の心境であろうか。“明日からはあなたなしで生きてゆくのね”と今まで心から放せなかった恋人を心静かに見つめていられる自分になったのであろうか。勿論、この人は彼に愛情が無くなったのではないだろう。否、あきらめとともに、もっと気高く深く真心こもった心の領域に立ち入ったのであろうか。最大の問題は1番の心境から2番へどうやって移るのか?ということであろう。それがわからないから、いつも悩んでいる私である。昔の人は出家した。現代は無理な話である。何かに全身全霊で打ち込む、それも一つの解決法かとも思う。一番ダメなことはアタマで解決法を求めることだ、となにかの本に書いてあった。
最後に3番へと歌詞は移る。2番で執着、こだわりから解放されたこの女性は幸せな未来を展望し、今までの過去を振り返ってみている。ああ、私も以前はおバカさんだったのね。今は何にもないけれど、きっと何かが見つかるはず。それを信じて明るく生きてゆきましょう。と聞こえるのであるが、、、、、色即是空、空即是色を感じる私でした。
「ラブユー東京」歌詞 歌:黒沢明とロス・プリモス 作詞:上原 尚 作曲:中川博之
七色の虹が 消えてしまったの
シャボン玉のような あたしの涙
あなただけが生き甲斐なの 忘れられない
ラブユー ラブユー 涙の東京
いつまでもあたし めそめそしないわ
シャボン玉のような 明るい涙
明日からはあなたなしで 生きてゆくのね
ラブユー ラブユー 涙の東京
幸せの星を きっとみつけるの
シャボン玉のような 夢見る涙
お馬鹿さんね あなただけを 信じたあたし
ラブユー ラブユー 涙の東京 涙の東京