敦亀通信

スコップ1杯分のボランティア

更新日:2017/08/09

迷走を繰り返した台風5号は九州、四国、中部北陸から東北へゆっくり進み秋田沖で温帯低気圧となりました。降り始めからの雨量が203ミリに達した敦賀市では、午前5時前、市内を流れる笙の川が氾濫の恐れがあるとして周辺住民約3100世帯、7000人に避難指示が出されました。敦賀市も笙の川が氾濫危険水位に達したので多くの住民に避難勧告が出されました。先の集中豪雨で大きな被害にあわれた北九州地区では災害復旧のさなかに台風が接近し被災者の方々にとって恐怖の数日間であったと思われます。ひとくちに災害復旧といいますが、無数の樹木と土砂が流れてきて家や農地をめちゃめちゃにしているTVニュースを見るにつけ他人事とは思えません。ご当地福井でも10数年前に集中豪雨を蒙りました。美山地区では土砂混じりの濁流が押し寄せ数名の尊い犠牲者が発生しあちらこちらで多くの方々が甚大な損害を蒙りました。私も当時、ある寺院でセミナーを受講中であったのですが、裏山が崩れ濁流が寺へ押し寄せてきました。自然の厳しさに恐れおののきながら本堂の畳をめくり安全な場所に運んだ次第です。寺の畳というものは昔に作られたからでしょうか、一般住宅用に比べ大変重いものです。その畳が本堂分だけでも50畳以上はあったものですから、裏に持ち手がついているといっても、手にかかる重さと痛みは今でも忘れられません。豪雨が去った数日後、被害が多かった地域へ友人たちとボランティア活動で復旧のお手伝いにいきました。受付をおえて私達のチームに割り当てられたご家庭につき丁寧にお見舞いの口上を述べたところ、連日の復旧作業で疲労も極限に達していたのかもしれません。ご家族の方々は大喜びで迎えてくれました。我々に託された作業は農作業小屋の土間に押し寄せた泥をスコップで外へ運び出すことでした。福井に育った人間にとってスコップは必需品です。冬季はスコップで家の出入り口や駐車場の雪かきは恒例作業になっています。雪が多く降る年には屋根の雪下ろしもスコップが無ければ始まりません。作業はスコップで泥を掬い取り一輪車で排出するだけ、たいしたことはない、とタカを食っていました。しかしそうした気分は厚く堆積した泥をスコップで1杯掬った時点でかき消えました。スコップ1パイ分の泥がこんなに重いものか、、、、雪の重さとは段違いです。心のうちで「なんのこれしき、俺たちには強力なパワーがあるんだ、」と覚悟して作業を始めたのですが、真夏の暑さがこれに追い討ちを加えたのです。15分もやったところで、一息つかずにはいられませんでした。相当の泥を掬いだした、と感じていたのですが、計画分をほんの少しかじった程度に過ぎないのです。ボランティアの使命感に燃えつつも災復旧作業を軽く考えていた自分が悔やまれました。何度も頭から水をかぶり酷暑と筋肉にかかる負荷に耐えながら夕方まで作業を続行しました。最後には、あまりにも苦しいので何度もトイレのふりをして苦しい作業からエスケープしていたことも苦い思い出です。作業終了後、ご家族の方から西瓜のおもてなしと感謝の言葉を頂き自分にも人助けができた、という充実感に浸りました。しかし帰途の車中で、「お前は今日一日の作業を終え、家に帰ってゆっくり休めるよな、明日からは又、仕事に行けるんだよね、しかし被災者の皆さんは瓦礫の中でいつ果てるとも知れない復旧作業が明日も明後日も続くんだ!」という想いが心に浮かび、被災者の皆さん申し訳ない、、、、という気持ちでいっぱいになったことが思い出されます。北九州の被災者の皆さんは今日も明日も復旧作業に邁進しておられることでしょう。政府や自治体もボランティアの方々も全力で物心両面の支援を行っています。どうかお身体に気をつけ一日も早く立ち直れることをお祈りするばかりです。遠く離れたご当地では何もできません。せめて私達にもできるご支援をさせて頂こうと、お店に義捐金ボックスをつくりました。私達とお客様のまごころだけでもおおくりしたいと思う今日この頃です。